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Eyesight & medical

パイロットに必要な視力は?
メガネでもなれる基準と身体検査

視力や体のことは、自分ではどうにもならない気がして不安になるものです。手術の扱いや身体検査で調べることまで、いまのうちに知っておきたい点を見ていきます。

結論

パイロットに必要な視力は、メガネやコンタクトで矯正して片目0.7以上・両目1.0以上です(国の航空身体検査の第1種)。裸眼の視力が悪くても目指せますが、レンズの度数には上限があり、航空会社や自衛隊にはそれぞれの基準もあります。

目が悪いからといって、すぐにあきらめる必要はありません。本記事では、国の基準の中身、メガネやコンタクト・レーシックの扱い、民間と自衛隊の違い、身体検査で調べることまで、順番に見ていきます。

How good does a pilot’s eyesight need to be?

パイロットに必要な視力は?

旅客機のパイロットに必要な視力は、遠くを見る視力で片目0.7以上・両目1.0以上です。裸眼でも、メガネやコンタクトで矯正しても構いません(国の「第1種航空身体検査」の基準)。操縦では窓の外の様子と計器の両方を正しく見続ける必要があるため、遠くだけでなく、少し先や手元の見え方も確かめられます。

見る距離第1種の基準
遠く(5m)片目0.7以上・両目1.0以上(裸眼でも、度数±8までのレンズで矯正してもよい)
中距離(80cm)片目ずつ、0.2以上の文字が読める
近く(30〜50cm)片目ずつ、0.5以上の文字が読める

出典:航空法施行規則 別表第四、国土交通省「航空身体検査マニュアル」

第1種は、仕事として飛ぶパイロット(事業用操縦士・定期運送用操縦士など)に必要な区分です。趣味で飛ぶ自家用操縦士は第2種でもよく、こちらには両目1.0と中距離の条件がありません。エアラインのパイロットを目指すなら、第1種を目安にしておきましょう。

Can you become a pilot with glasses or contact lenses?

メガネやコンタクトでもパイロットになれる?

なれます。国の基準は裸眼の視力を問わないので、メガネやコンタクトで片目0.7・両目1.0まで見えれば届きます。

気をつけたいのは、視力の数字よりもレンズの度数です。矯正に使うレンズの度数は±8(ジオプトリー)までと決まっていて、これより強いレンズでないと見えない場合は基準に届きません。自分の度数は、メガネの処方箋や眼科で確かめておきましょう。

メガネで基準を満たす人は、予備のメガネを持って乗ることが条件になります。飛んでいる途中でメガネが壊れても、見え方を保てるようにするためです。コンタクトにも、いくつか決まりがあります。

  • 普段はコンタクトでもよいが、予備は必ずメガネにする(予備にコンタクトは使えない)
  • 検査では予備のメガネでも測り、度数はそのメガネで計算する
  • 多焦点のコンタクト(遠近両用など)と、色つきのコンタクトは使えない
  • 初めてコンタクトを使う人は、1か月以上慣らしてから検査を受ける

Do airline and military pilots have different eyesight standards?

民間と自衛隊のパイロットは視力の基準が違う

航空会社のパイロットは国の基準に会社の基準が加わり、自衛隊のパイロットは自衛隊の採用の基準で見られます。いちばん大きな違いは、自衛隊では裸眼の視力にも条件があることです。

航空会社のパイロット:国の基準+会社の基準

航空会社のパイロットも、国の第1種に合格し続けることが前提です。そのうえで、会社ごとに採用の条件を設けています。レンズの度数の範囲を国より狭くしている会社や、矯正した視力に国より高い数字を求める会社もあり、国の基準を満たしていても応募できないことがあります。

会社の条件は、応募する年の募集要項で確かめてください。航空会社に入って育ててもらう道は、自社養成パイロットの記事でくわしく紹介しています。

自衛隊のパイロット:裸眼にも条件がある

自衛隊でパイロットを目指す「航空学生」では、矯正した視力だけでなく、裸眼の視力にも下限があります。

  • 遠く:両目とも裸眼で0.1以上、矯正して1.0以上
  • 裸眼が0.2未満の人は、矯正に使うレンズの度数が−6.0〜+3.0の範囲
  • 中距離は0.2以上、近くは1.0以上
  • 視力を矯正する手術やオルソケラトロジーを受けていないこと
  • 矯正して受ける人はメガネで測る(コンタクトと遠近両用のメガネは使えない)

出典:防衛省「令和8年度 海上・航空自衛隊航空学生採用要項」

自衛隊の一般幹部候補生(飛行要員)も、ほぼ同じ基準です。民間の道では裸眼の視力を問われないのに対し、自衛隊では裸眼で0.1に届かないと身体検査に合格できません。目が悪い人は、どの道を選ぶかを考える前に、まずここを確かめておきましょう。

Can you become a pilot after LASIK or ICL?

レーシックやICLを受けてもパイロットになれる?

国の基準では、レーシックは条件つきで認められ、ICL(Implantable Collamer Lens の略)も国の判定を受ければ認められる道があります。ただし、手術を受けていると合格できない進路もあるので、受ける前に目指す道の条件を確かめてください。

レーシック(角膜の形を変える手術)

レーシック(LASIK)など国の基準が認める角膜の手術(LASIK・RK・PRK)は、手術から6か月以上たって目が安定し、眼科の専門医の検査で異常がなければ、国の基準に合格できます。

気をつけたいのは、手術を受けた人は「裸眼」で基準を満たす必要があることです。手術のあともしばらくは、見え方が安定しているかを定期的に確かめられます。

ICL(目の中にレンズを入れる手術)

ICLは、国の基準では「基準に合わない状態」として扱われます。手術から3か月以上たって安定していれば、国土交通大臣の判定を申請でき、認められれば乗務できます。

航空大学校・自衛隊・航空会社の扱い

  • 航空大学校:レーシックを受けた人も受験でき、願書に手術歴を書き、一次試験に合格したら眼科の専門医の診断書を出します。一方、大臣の判定が必要な人は基準を満たさないとされているので、ICLを受けた人は合格できません
  • 自衛隊(航空学生など):視力を矯正する手術を受けていると、身体検査で合格できません
  • 航空会社:募集要項に手術の扱いが書かれていないことが多いので、応募を考えている会社に確かめましょう

オルソケラトロジー

寝ている間に専用のコンタクトをつけて角膜の形を整えるオルソケラトロジーは、国の基準で「基準に合わない状態」とされています。航空会社や大学にも「受けていないこと」を応募の条件にしているところがあり、やめてから6か月たたないと応募できない会社もあります。使っている人は、目指す道の条件を早めに確かめてください。

Do color vision and astigmatism affect the medical exam?

色覚や乱視はパイロットの身体検査に影響する?

色覚は検査の項目に入っていますが、最初の検査で引っかかっても、別の検査で合格できる場合があります。乱視は、国の基準には項目がありません。乱視も含めたレンズの度数で判断されるので、矯正して片目0.7・両目1.0まで見えて、度数が±8の範囲に入っていれば基準を満たせます。

操縦では、計器の表示や空港の灯りなど、色で伝わる情報を見分ける必要があります。そのため国の身体検査では色覚を調べます。

まず石原式の色覚検査表で調べ、正常の範囲に入らなかった人も、「パネルD-15」という別の検査でパスすれば合格です(眼科の専門医が確認します)。パネルD-15でもパスしなかった場合は、国土交通大臣の判定を申請する道が残っています。色覚の検査は、原則として初めて身体検査を受けるときに行います。

ただし、自衛隊の航空学生の要項は「色覚等に異常のないもの」としていて、国のように別の検査で認める仕組みは書かれていません。色覚に不安がある人は、道ごとの違いに気をつけてください。

補足:石原式とパネルD-15って?

「石原式」は、表に描かれた数字を読み取る検査です。数字は色の見え方によって読み方が変わるように作られていて、たとえば多くの人が「8」と読む表を、「3」などと読む人もいます。「パネルD-15」は、15の色を順番に並べていく「色並べ」の検査で、石原式で正常の範囲に入らなかった人の色の見え方を、さらにくわしく確かめるために使われます。色の見え方に不安がある人は、身体検査を受ける前に眼科で相談してみてください。

What the aviation medical exam checks

パイロットの航空身体検査の検査項目

目のほかにも、全身を調べます。国の基準は、心臓や血圧、呼吸、脳や神経、耳と聴力、歯など14の項目に分かれています。空の上で急に体調を崩すと、乗客や乗員の安全に直接かかわるためです。

  • 血圧:上が160未満、下が95未満
  • 聴力:決まった高さの音が、決まった大きさで聞こえるか
  • ぜんそく:3年以上症状がなく、その間治療もしていなければ合格
  • 花粉症などのアレルギー:症状が軽いか、決められた薬などで抑えられていれば合格
  • 歯:虫歯などがあれば治療を求められる(気圧の変化で痛みが出ることがあるため)
  • 脳波:初めて身体検査を受けるときに調べる

身体検査は、パイロットになってからも受け直し続けます。第1種の有効期間は原則1年で、旅客機のように二人で操縦する便では60歳から半年ごとになります(出典:国土交通省「航空身体検査証明の有効期間」)。

Have eyesight standards been relaxed?

パイロットの視力の基準は昔より緩くなった?

視力の数字は変わっていません。国の検査のやり方を定めた「航空身体検査マニュアル」は令和7年(2025年)6月から新しい版になりましたが、片目0.7・両目1.0・レンズの度数±8という数字は、改正の前と後で同じです。

変わったのは、手術を受けた人などの確かめ方です。ICLを受けた人が大臣の判定を申請するときの決まりが書き加えられ、レーシックを受けた人の確認は細かくなりました。検査では、予備のメガネでも視力を測るようになっています。

What you can do now if you’re worried about your eyesight

視力が心配な人がいまからできること

いちばん確かなのは、早めに自分の目の状態を知ることです。数字が分かれば、選べる道が見えてきます。

眼科で視力と度数を確かめる

まずは眼科で、矯正したときの視力とレンズの度数を確かめておきましょう。コンタクトを使っている人は、予備のメガネの度数で計算されることも覚えておいてください。度数が強めの人は、国の±8の範囲に入っていても、会社によっては条件に入らないことがあります。

指定の医療機関で身体検査を受けてみる

航空身体検査は、国が指定した医療機関で受けられます。まだ操縦の資格を持っていない人も、「航空機操縦練習許可」の申請に使う形で受診できます。費用は医療機関によって違い、1回数万円ほどかかります。パイロットを仕事にするつもりなら、第1種の基準で見てほしいと伝えましょう。指定の医療機関の一覧は、国土交通省のページに載っています。

私立の大学や専門学校の多くも、出願や入学の条件として、第1種相当の身体検査に合格していることを求めています。学校ごとの条件はパイロットを目指せる大学・専門学校の記事で比べています。

手術やオルソケラトロジーは、条件を確かめてから

視力を上げる手術やオルソケラトロジーは、受けると合格できなくなる道があります。目指す道が決まる前に急いで受けず、条件を確かめてから決めましょう。

日ごろから眼科で目を見てもらう習慣は、パイロットになってからもずっと役に立ちます。目は、空の仕事の大事な道具です。いまから大切にしていきましょう。

Summary

まとめ

パイロットに必要な視力は、メガネやコンタクトで矯正して片目0.7以上・両目1.0以上です。裸眼の視力が悪くても、目指すことはできます。気をつけたいのは、レンズの度数の上限(±8)、航空会社や自衛隊それぞれの基準、そして手術やオルソケラトロジーの扱いです。

メガネをかけていることは、夢をあきらめる理由にはなりません。編集部は、目のことで不安を抱えている人にこそ、まず自分の数字を確かめて、選べる道を知ってほしいと思っています。4つの道の違いはパイロットになるにはの記事でまとめています。不安を一つずつ確かめていけば、操縦席はきっと近づいてきます。

FAQ about pilot eyesight and medical exams

パイロットの視力・身体検査のよくある質問

Q. 身体検査に落ちたらどうなる?

道によって違います。国の身体検査では、基準に合わない項目があっても、国土交通大臣の判定を申請して認められる場合があります。ただし航空大学校の入試では、大臣の判定が必要な人は不合格になり、脳波の検査で不合格になった人は受け直せません。航空会社にも、身体検査で落ちると受け直せない会社があります。基準は道ごとに違うので、1つの道で落ちても、ほかの道が残っていることがあります。

Q. 会社によって視力の基準は違う?

違います。国の第1種に加えて会社ごとに条件があり、国より厳しい会社もあります。応募する年の募集要項で確かめてください。

Q. 航空大学校の視力の基準は?

国の第1種の基準を踏まえて身体検査をするので、矯正して片目0.7以上・両目1.0以上が目安です。レーシックを受けた人は受験できます。ICLは国の判定が必要な手術で、航空大学校は国の判定が必要な人を基準に合わないとしているため、合格は難しいと考えておきましょう(出典:航空大学校「令和9年度 学生募集要項」)。

Q. 身長や体重の制限はある?

国の身体検査の基準に、身長の項目はありません。体重も数字の線はなく、操縦に差しつかえるほどの肥満がないかを見ます。自衛隊や海上保安庁のパイロットの採用には「158cm以上190cm以下」という条件があります。航空大学校は身長の制限をなくし、無理のない姿勢で操縦できるかを試験で確かめています。

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